マタウラ川の神秘
マタウラ川は世界で屈指のブラウントラウトのメッカ。200キロ以上にわたる川
のいたるところで釣りができる。裸眼で釣るサイトフィッシングが定番の透き通
った源流を始め、深い青緑色の渕や細長い清澄な沢。計り知れない支流の迷路や、
長距離にわたる静かな急流には魚の群れが生息する。ニュージーランド中で最も
高度な技能を要する釣り場だといってもよいでしょう。初心者はすぐに降参して
しまい、常連者でさえも自らの腕を過信することが許されない。しかし、コンデ
ィションとガイド次第では、最高の鱒釣りが可能になるのがマタウラ川なのです。
マタウラ川のたたずまい
早春に当たる10月と11月の雪溶け前には、川の支流に浅瀬ができ、メイフラ
イ(カゲロウ)がニンフ(幼虫)からダン(亜成虫)そしてスピナー(後成虫)
になるまでの時間が長くなるため、ドライフライに絶好の機会。“ニンフィン
グ”とも呼ばれるニンフフィッシングも可能です。
春の雪溶けの頃になると、雨も多く、川の増水を予測できなくなる。マタウラ川
の水量が落ち着くのは1月から2月になることもある。個人的には、三月と四月
の紅葉の季節が好きです。なぜなら、水面が下がった川では釣りやすく、トロフ
ィーサイズの魚を釣るのも夢でない。マタウラ川はカゲロウやカディスやミッジ
が孵化し、ワカイアのような源流の支流では、カワゲラが散発的に孵化します。
真夏になるとマタウラ川は甲虫や地虫などの陸生の昆虫で賑わう。そのお陰で支
流では、大きな獲物をストークすることができる。神経が研ぎ澄まされ、やりが
いのある体験です。
マタウラ川のポプラが黄色に色づき、日の足が短くなると、秋も終わりの気配が
漂う。すると午後の孵化が定期的になる。年によってはデリアティディウム種の
カゲロウやダン(亜成虫)が川の表面を煙のように覆うことがある。そして一時
はまったく生息していないかのように思えた鱒が、数多く群れをなして川を昇る。
生きて釣りができてよかったと思う瞬間です。